初心者の音のよさとは・・・

いくつか考えたことを書いていってみよう。

(1)一生懸命さ 
米国の野球ファンが、日本人が高校野球に熱を上げていることをみて
「日本ではどうして、プロ野球に負けないくらい高校野球が人気あるのですか? プロ野球の方が技術的にすごいじゃないですか?」
という質問をしているのをきいたことがある。そのとき質問を受けたのは日本の女性レポーターみたいな人だったが、
高校野球プロ野球にないよさがあるのです。」
などと、答えになっていないような答えをしていた。質問の意図は
「では、その良さはなんですか」
ということだろうから、このレポーターの答は、受け答えにはなっていない・・・。
この答えをまじめに考えてみると、ひとつは「地元びいき」だろう。自分の出身地の学校が勝ち上がると、それが全く自分とは関係ない学校であろうと、なんとなくうれしかったりする。それでまわりの同僚なんかいに、
「おれ○○県出身なんだよ。いやー○○高校、期待しちゃうね」
などと発言してしまったりする。
でも、同感と思う人がきっといると思うのだが、自分としての本当の答えは別にある。それは、「選手の必死さ、純粋さ、誠実さ」だ。高校3年間一生懸命頑張ってきて、その成果を一発勝負で戦っているのだ。その気持ちの入り込み方の激しさは、観ていて心打たれるものがある。

さて、クラスタの初心者の演奏にもこれと同じものを感じるときがある。第1章でつづったように、人前で演奏するというのは、本当にプレッシャーがかかる。だから自宅で一生懸命練習してくる。その一生懸命さが高校野球よろしく、クラスタでも聴く人の心を打つのだと思う。

(2)その人のバイタリティ  
初心者であるにもかかわらず、みんなの前で弾こうという人だ。まず間違いなく精神的に強いものを持っており、また面白そうと思ったものに対し、一歩踏み出して行くバイタリティを持っている方に違いない。だから、それ相当の人生を歩まれてきているのだとも思う。
まずMCが面白い。もちろん、その面白さは、漫才をみているような面白さではない。(そういう人もいるが・・・)そうではなく、その人が誠心誠意音楽に取り組んでいることとか、「一歩踏み出してしまった経験」だったり、そういうものが、にじみ出ている面白さだ。そしてこういう勇気をもったチャレンジは、みていて気持ちいい。自分を表現したいという気持ちを持っている人の前向きさが伝わってくると、それだけで元気をもらったような気になる。こういったバイタリティを感じることも初心者の方の演奏がいいなと思う理由だろう。

(3)自分の過去をみるのかも・・・ 
「いやーこんなに緊張するとは思いませんでした」
初心者の方が1曲終わったでよく言う台詞だ。そのときみんな心の中で思うのだ。
「あなただけじゃないよ・・・私なんかもう○回だけど、いまだにあがってしまうのだから・・・」
だから、そういう初めてのことを体験している方で、まさにその体験をしたそのときに、それについての率直な意見を聞くのは、みんな楽しく感じるのだ。「かつて自分が歩いた道」というやつだ。初めての演奏というのは、当たり前だが、みんな経験してきている。そのとき自分はこうだったなと自分の過去を思い起こしてしまう。

以上、クラスタのフリーコンサートは初心者にやさしい。でも、初心者の方の演奏といってもみんな真摯な態度で聴き入る。だから演奏しているほうは相当あがるかもしれない。でも、その聴いている人はみんなそれを経験してきている人ばかりだ。とてもいい経験ができる場所なのだ。そして自分も、そういった初心者の方の音を聴くのをすごく楽しみにしている。