マイク派

それでは、次に話をマイク派の話。
ピックアップで自分の音作りをしようとしてどうにもならず、「やっぱり生音が一番」となると、マイクしかなくなる。
いまから20年くらい前は、ピエゾピックアップの音はひどかった。いわゆる「ピエゾくさい音」にどうしてもなってしまい、「アコースティックギターのあの音」が出せず「アコースティックギターは マイクでしか拾えない」との結論になった方ばかりだったと思う。自分もそういう経験を持ったひとりだ。そして、やはりマイクで拾った音はいい。いいマイクといいギターが準備できるのであれば、そのギターの生の音のよさは、やはりマイクの方がピックアップより引き出されると思う。また、そのマイク採りの音にエフェクターかけると、ギターの自然な音響感を失わないでエフェクターをかけれるという、美味しいところが得られる。だから、マイクの方が音づくりとしては有利かなと思う。
ただ問題は、「マイクでいい音を採るのは腕がいる」ということだ。もちろん、一番大きい要因は前述のようにハウリングだ。これは非常に厄介で、どうにもならないと、音量を上げることが不可能となる。結果は、聴こえないような音量で演奏するか、もしくはある音域をばっさり切って(ハウリング帯域をカットして)ひどい音で演奏せざるを得ない状況になる。また、こういったことを避ける為にサウンドホールに蓋をしてしまうケースなどあるが、この時点でギターの一番おいしい音ではなくなることを容認せざるを得ない。こういう状況では、結論は、「マイクでできる会場のキャパは限界あり」となる。
では、頑張ってハウリングは回避できたとしよう。でも更なる難しさがある。ギターを動かすことによる音の変化だ。ちょっと耳のよい人であれば、ギターとマイクの位置関係が数センチずれただけで音が変化することをわかるだろう。だから、演奏で体ごとスイングして(動いて)しまう人はそもそもマイク派になれない。この意味で、感心したのが、アコースティックマガジンにのっていた斎藤誠氏の記事。マーチンのイベント(だったと思う)で、演奏をすべてマイク採りでやったと書いてあったのだが、
「マイクとギターの位置関係を意識的にずらし、そのことによる音質の変化を演奏技術として使っている」
といった内容が書かれていた。すごい。ボーカルが口とボーカルマイクの距離を上手に使うが、あれはマイクを手で持っているので、距離を調節することは簡単だ。しかし、ギターを演奏しながらそれをやるのは、ギターの演奏技術として難しいし、すばらしい耳をもっていないとできないだろう。本当に演奏する姿勢を楽に保ったまま、そんな事できるのだろうか・・・一度ステージを見てみたい。(自分は生で斎藤氏のステージはみたことない)

以上、ピックアップとマイク両方に対する自分の意見を綴ってみた。
結論として自分はどっち派か?
いまのところ、先に述べたようにサイレントギターを使っていることもあり、ピックアップ派だ。又、もうひとつ理由をつけるとすれば、ピックアップの音は、ラインに入力後、いろいろエフェクト処理できるのだが、そのことが作曲のときのイマジネーションの刺激に役立つときがあるということもある。とりあえず「自分の現在の回答」を書いたが、でも、やっぱり場所によってというのが本音だ。自分にとっての究極のギターとそれを最高にいい音で鳴らせるマイクでの環境が手に入れば、マイクの方が好きになりそうだし・・・。
ちなみに、クラスタではマイクの方がいい。特にクラシックギターの演奏はナイロン弦へのタッチの微妙な感じはマイクでとった方が楽しめる。
「毎回サイレントギターを使ってラインでやっているくせに?」
といわれそうだが、正直そう思っている。20人も入れば満員になるスペースだ。ハウリングを気にしなくても、マイクで十分伝わる音となる。そのうち、
「このギターの音はマイクで聴いてほしい」
というギターを手に入れたいと切に思う。