ナイロン弦 

まず、ナイロン弦のどこが好きか。ナイロン弦では、自分の個人的趣向として装飾音のスライドの音が大好きだ。ナイロン弦は、音の立ち上がりがスチール弦に比べてゆっくりというか、やわらかく感じる。それが、単音としてみたときに、表現として、自分の好みなのだ。この立ち上がり音のやわらかさは、ナイロン弦の倍音の少なさによるものかもしれない。これは、コード弾きとしてもおいしい。コード弾きはスチール弦でのストローク音も捨てがたいのだが、ボサノバで使われるようなテンションコードはナイロン弦の方がきれいに響く。以上がナイロン弦のよさとして自分が感じているポイントだ。

次にナイロン弦の各メーカーの違いについて書きたいところだが、これは、スチール弦以上に、ギターとの相性が大きくでるようで難しい。ちなみに、自分はインターネットでナイロン弦の比較をしているサイトを探してみた。結構ある。ただ、そこに書かれている評価は、それぞれのサイトで、けして同じではなく、むしろばらついている。おそらく、このばらつきは、自分のギターとの相性によるものではないかと思う。
自分は、サイレントギターがヤマハであったことから、しばらくは、ヤマハの弦を使っていた。現在は、どこのメーカーもあまりに品質の悪い弦、すなわち音痴の弦というのは、なくなったと思うが、ヤマハの弦については、そのなかでも質の均一さでは、しっかりしていると思う。まあ、ヤマハに限らず日本製の弦は「日本人は世界一品質に厳しい」といわれているので、自分としては、「はずれをさける」という意味合いで、日本製、そして、サイレントギターのメーカーでもある、ヤマハの弦を選ぶことが多かったということだ。その他でも、試してみたことがある弦で面白かったのをあげてみよう。
まず、GHSのドイルダイクス氏のシグニチャー弦。ドイルダイクス氏はそのテクニックを故チェットアトキンス氏に認められていたくらいのテクニシャンだ。それは、音源を聴ければ、即納得できると思う。本当に上手いギタリストだ。ドイルダイクス氏は、「普通はスチール弦を弾くのだが、ナイロン弦も使う」というスタイルであり、その方が監修した弦ということで、とても興味があった。で、その弦なのだが、一番の特徴は、3弦に巻き弦を使っているというところだ。通常、3弦は1、2弦と同様巻き線となっていない。
しかし、そのせいで、太さの太いナイロンの生弦ということで、音としてどうしても曇った、言い方は悪いが、「輪郭のはっきりしない音」になりがちだ。スチール弦の方は、この3弦の倍音が特にコードストロークなどできらきら感を出していると感じるのだが、ナイロン弦ではこの弦が鈍い音に感じてしまい、物足りなさを感じることがある。特に自分のように、スチール弦とナイロン弦両方を弾くギタリストではそのように感じることがあるのではなかろうか。ドイルダイクス氏も同じことを感じたのだろうと思うのだが、この3弦がスチール弦のセットのように巻き弦なのだ。弾いた感想は、たいへん歯切れのよい音。3弦1本変わるだけでこれほど印象が違うのか・・・と思うくらい違う。親指でオルタネイトベースを刻む、チェットタイプ、もしくはカントリータイプの曲にフィットする。ということである時期続けて使っていた。しかし、このところ、売っているのをみたことがない。あまり使う人がおらず、クローズされてしまったのだろうか。時々、あの弦をまた弾いてみたいと思うことがあるのだが・・・。